どりふてぃんぐそうる

Twitter:@fair_mios3

2021冬アニメ感想② ゆるキャン△2期/Dr.STONE2期/弱キャラ友崎くん/SK∞/ワンダーエッグ・プライオリティ

前半はこちら↓

liveindead.hatenablog.com

 

 

ゆるキャン△2期

f:id:Liveindead:20210405230459j:plain

良くも悪くも1期と変わらない作りで安心して視聴できた。この手の美少女部活アニメは部活動そのものよりキャラクターの交流に重点が置かれることが多いが、「ゆるキャン△」は一貫してキャンプに重心がある。例えばキャンプには参加する/しないの選択肢があり、都合があって全員揃わない場合でも行けるメンバーでキャンプに行くし、全員でキャンプに行くことになってもしまりんはソロで現地に向かうし、資金集めのためアルバイトをする際にもみんな同じところで働こうとはしない。そもそも斉藤としまりんは部活メンバーですらない。彼女たちの交流はキャンプによって支えられており、キャンプ抜きに彼女たちの交流は描けない。

2期ではキャンプを通じてメインキャラの親兄弟や先生にもスポットライトが当たるが、特によかったのが6話だ。6話は大人やしまりんなどのベテランが不在の状態で大垣ら3人でキャンプに行くも準備不足で死にかけるという話だ。これまで美少女がゆるくキャンプする話だったはずが、6話ではキャンプの危険性が訴えられることとなる。これは美少女の交流に重心があるアニメならば悪手であるが、「ゆるキャン△」においては問題ないどころか正しくキャンプの実情を啓発している。そして唯一と言っていいこのシリアス展開は作品本来の雰囲気を壊さないギリギリのラインを突いており、そのバランス感覚に感心した。あるコンテンツをオタクに布教するに当たって、これほどいい教材はないであろう。

 

 

Dr.STONE2期

f:id:Liveindead:20210405230519j:plain

原作が面白いため当然アニメも面白い。アイシールド時代から続く稲垣の作風として「一芸特化キャラ」の多用がある。アイシールドは「天才じゃなくても一芸に秀でていれば力を合わせて天才と戦えるんだぜ」って話だが、これは裏を返せば「一芸すらない無能は生きられない」という残酷な話でもある。ここから派生するドクストの氷月は「老人や無能などのちゃんとしてない人間は生きる価値ないだろ」というゴリゴリの選民思想の持ち主だ。千空はジャンプ主人公だから「どんな人間もどこかで役に立つ」というリベラルな反論をする。千空チームも一見すると一芸特化チームに見えるが、老人や病人な非力な人間にも仕事が割り振られ戦力となっていた。科学というツールを介することでどんな人間も戦力になれるという結論は、アイシールドの議論を発展させていて面白い。ただ、どちらかというと本題はこの後の話なので原作全部アニメ化して欲しい。

 

 

弱キャラ友崎くん

f:id:Liveindead:20210405231421j:plain

俺的今期キャラデザランキング首位アニメ。

日南による友崎のリア充化作戦は目的と手段が逆転している。身なりを整えるのも女子に話しかけるのも彼女を作るのも「リア充になるため」という目的のためのステップに過ぎない。この価値観の相違をきっかけに日南と友崎は対立することになる。表面的には(リアルの)勝ち組と負け組の二項対立であるが、本質的には自助努力の対立である。日南は他人との競争の中に自己の価値を見出す。だからこそ自分よりゲームが強い(=格上)の人間が陰キャなのが許せない。これに対し友崎の自助努力は自分との戦いであり、競争相手は不在でも構わない。アタファミが好きだからやり込み、気が付いたら一番になっていたのだ。その後二人の対立は「仮面と本音」の問題に置き換わることとなる。日南は自分を偽ってもリア充になるという結果が出ればいいと考え、友崎はリア充になるためといえ自分を偽って対策だの攻略法だのと考えるのはよくないと考える。ここで「ありのままの自分が一番だ」みたいな結論に到達していたら萎えていたところだったが、再び初期の偽りない陰キャとして過ごした友崎がちゃんと妹に酷評されてて安心した。最終的に友崎は「俺のプレイスタイルはスキルと本当にやりたいことのハイブリッドだ」と暫定的な結論を出すことになる。友崎が日南を論破したわけじゃなく、引き分けの結論になったのがポイントだ。人生を悲観するオタクがありのまま過ごしていても美少女が寄ってこないことは周知の事実である。日南のやり方も加減の問題であり、恋愛は少なからず他人との競争の側面もあるのだからオタクくんも斜に構えてないでちゃんと努力しようねと正しく自己啓発を促すアニメだった。

 

 

SK∞

liveindead.hatenablog.com

個別記事で感想を書いたからここで書くことがない。腐ったお姉さま方に人気だが男が見ても普通に楽しめるので暇な人は見てほしい。

 

 

ワンダーエッグ・プライオリティ

f:id:Liveindead:20210405230552j:plain

 内容が難しいのと最終回が6月に持ち越されたため、フロイト精神分析をベースにしているなあくらいのふわっとした感想しか出てこない。生の欲動(エロス)と死の欲動タナトス)の戦いはフロイトの思想そのままで、例えばリカであれば母親から脱却する欲望を満たすことを父親を探すこととリストカットをすることといった真逆の手段で達成しようとしたように、一つの欲望に二つの対立した欲動がせめぎあうことを指す。

「ワンエグ」終盤において死の欲動はフリルの影響で強化されていることが示される。フリルはアカと裏アカによって作られたAIであり、アカがあずさと婚約したことによる嫉妬であずさや二人の子のひまりを殺害してしまう。裏アカがフリルを処分するも、フリルの影響は残っており少女が自殺を繰り返している。アイら4人は無意識領域である夢の世界において自殺した少女らを助けることにより、彼女たち自身の関係者を蘇生させることを目的とする。ところが彼女たちは4話だか5話で「危険を冒してまで死人を助けようとしなくてもよくね?」と物語をひっくり返す発言をする。結局過去を清算するためとかいう理由で彼女たちは再び戦いに赴くこととなるが、このことは他人を救うという外的な要因より実存的な内面に重心があることを示している。実存的問題を解決し本能としての死の欲動を克服することこそエロスの戦士となることであり、そうすることでようやくフリルと戦えるレベルまで到達するといえる。

放送版においてアイの実存的問題は解決した。おそらく特別編では視点を外に向けて本能ではなくシステムとしての死の欲動(フリル)と戦うことになると思うのでそこそこ楽しみにしている。

 補足:フリルが<母親>としてのアカを剥奪されて凶行に走るくだりはフロイトラカンエディプス・コンプレックスの話と接続されるんだろうけど無知なので詳しい方いたら教えてください。

 

 

 

呪術廻戦とバック・アロウも見ていたが、前者は特筆すべきこともないし、後者は現状そこまで面白くないのと後半クールも見ないと語れないので省略している。