どりふてぃんぐそうる

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ラブライブ!スーパースター!の感想 女児アニメ化するラブライブ

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クゥクゥちゃん・・・いいと思います。

ラブライブ!」シリーズは始動から10年近くが経過し、今やアイドルコンテンツ界において一定の地位を築いている。そんな中シリーズ4作目として「ラブライブ!スーパースター!」が放送された。ぶっちゃけ(元)ラブライバーの俺でさえ「そこそこ面白かった」程度の感想だったんだけど、世間的にはどんな評価なのか気になるところ。一応(元)ラブライバーのよしみとして以下に感想を残しておこうと思う。

 

俺の「スパスタ!」(←正式な略称って何?)への評価がそこまで高くないのはあらゆる点で無限の既視感があるからだ。既視感というのは主に初代「ラブライブ!」に対してで、制作陣が同じだからというだけでは流せないレベルで同じネタを擦っている。

物語は「世界観としての物語」「ジャンルとしての物語」「プロットとしての物語」の要素に分解することができるが、「ラブライブ!」シリーズにおいて世界観(年表的な時代背景のこと)はほぼないから除外するとして、次のジャンル面においては初代まんまであることはすぐ分かる。というか序盤は「新設校の学部間格差」みたいな問題からスタートしたから期待していたのに、中盤で廃校設定が唐突に出てきてマジで肩を落とした。別に廃校云々が悪いわけではなくて、廃校問題すら学部間格差とひっくるめて恋の加入で強引に消化されたことが残念だった。

同じ廃校問題でも、無印を勝者の物語と定義付けてそれとは対照的に敗者の物語として別ルートの結末になったサンシャインは面白かった。ミューズと比べ相対的に凡人の集まりであるAqoursでは廃校は止められなかったし、しょっちゅう挫折していたような記憶がある。

そもそも「ラブライブ!」シリーズはジャンルでいうと「アイドルもの」というよりは「部活もの」に近い。負けるときは大人の事情はなく単に自身の実力不足だからだし、目標の実現手段は金銭がどうこうではなく大会で優勝することに帰結する。「ラブライブ!」の画期的な点は既存の「アイドルもの」を「部活もの」に変形させた点にある。「部活もの」のフォーマットに乗っ取っているから彼女たちは部員集め→チーム結成→全国大会のルートを通る必要があるし、アイドル活動の時間は有限で、引退や卒業といった明確な終わりが設定されている。

ジャンルとしての「部活もの」において廃校問題はあまり馴染みがない。「一定数の部員が集まらなければ廃部」という設定は頻出するが、一部活の活動に学校の存続が関わってくるのは「ラブライブ!」特有のものと言っても過言ではないように思う。この廃校問題設定は、本来ビジネス的側面のある「アイドルもの」を大人が介在しない「部活もの」に変形させるにあたって本来のシビアさを残そうとした名残であると解釈すればそう突飛な設定でもない。ここまで含めて「ラブライブ!」というジャンルと認識すれば毎度廃校ネタを擦られても「まあラブライブ!ってそういうものだよな」と許容できる。

ちなみに伝統と化した廃校ネタを完全にスルーした虹ヶ咲のアニメも結構面白かった。

 

次に「プロットとしての物語」であるが、「各話ごとの登場人物の動き全般」くらいのニュアンスで俺は使っている。俺がラブライブは序盤の部員集めがかなり面白いと勝手に思っているのはこのためだ。他作品と比べても「ラブライブ!」のキャラは立っている方だと思うし、そんな彼女たちが全員違う動機、それなりにキャッチーなエピソードを持って加入するのだからまあ面白い。ジャンルとしての物語がほぼ固定化されている以上、他シリーズを見ている人間ほど部員集めが終われば大会があって廃校問題を解決して・・・というストーリーが透けて見えてしまう。一方部員集め時点では各キャラの内面は全然知らないし毎回違う話が出てくるから相対的に面白く俺は感じるという理屈。まあ何だかんだ言っても優勝シーンや解散シーンは普通に泣くのだけれど・・・。

 

さらにミクロなところで言えば演出面がある。「生えてくることり」「矢澤にこのウンコ帽子」「恋の加入シーン」「最終話のスノハレ演出」など、画像を引っ張ってきて比較するもの面倒なほど初代をリスペクトしているシーンが多い。これらの初代オマージュはサンシャインでも見られたが今作は特に多い。

 

一連の前作オマージュ要素は「同じネタの繰り返しでつまらない」という見方で減点できる一方で、「ラブライブ!の女児アニメ化」という視点で正当化することもできる。

ラブライブ!」シリーズのストーリーは単純明快で、視聴者に考察を促すような複雑な設定群や緻密な世界観は存在しない。友情と努力で夢を叶える極めてクリーンな物語だ。誰が見ても分かりやすくそれなりに面白いストーリーは他のアニメに比べればオタク以外の層にも受け入れられている。紅白にも出たし献血やセキュリティ関係の企業や厚生労働省とタイアップして明らかに大衆受けを狙っている。極めつけに今作では放送局がNHKになり時間が日曜夜7時のゴールデンタイムになっている。全国のキッズが鬼滅を見ているように全国の女児がラブライブ!を見るようになってもおかしくない。プリキュアなどを思い浮かべると分かりやすいが、毎回同じようなストーリーをしているというのはキッズ新規層を取り込むのに重要である。女児アニメとして見れば「ラブライブ!」シリーズが毎回同じような話をやっていても「それが伝統だから」と胸を張って主張することができる。プリキュアが毎週変身して怪人を倒すのをマンネリと言う視聴者がいないのと同じように、「ラブライブ!」シリーズが毎回廃校云々で揉めたりラブライブ!優勝を目指しても何の問題もないどころか長所として解釈できるようになる。

露骨な大衆狙いは商業的な要請から来ているのだろうが、ストーリーラインの使いまわしを正当化する行為として強引に擁護しておきたい。腐ってもラブライバーなので。

(単純に花田のネタの引き出しが終わっているという線もワンチャンある)

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厚生労働省のお墨付きアニメとなったラブライブ



補足:誤解されないよう書いておくが女児アニメが毎回同じ話でつまらないといった意図はない。女児アニメは配慮がなくストレートに感情を表現する女児と目の肥えたオタク両方を魅了する優れたアニメだと思う。俺もプリキュアを見て育った。